君の瞳に僕の色は映らない

「はいはい」




早歩きだったから、意外と早く着いた。



公園に着いて、知花が真っ先に行くのは、いつも決まってブランコ。



知花は、錆びた鉄の鎖をもって漕ぎ出した。


昔からブランコばかり乗っていたせいか、四歳でもう一人で漕げるようになっていた。










どれだけ漕いでいたんだろう。



よく飽きないなといつも思う。



「あと二分くらいで開館かな」



腕時計を見ながら言った。




「あれ?───じゃない?」


「───だね」



後ろで誰かの声がした。


さっきまでブランコの音と、たまに喋る知花の声しか聞こえなかったのに。



もうすぐ図書館が開くから誰か来たんだろう。



「浩希くーん!」


「えっ」



突然、名前を呼ばれて驚いた。



もしかしたら、僕じゃないだれかを呼んだ可能性を微かに考えながら振り向いた。




桜田仁奈。