「バカ……んん、大公女の姿が見えませんね」
 
「あら?本当ね」
 
「さっきまでいたんだけど……」
 
「第一王子の姿も見えないようだから二人でどこかに行ったんじゃないかしら?」
 
「珍しい組み合わせですよね」
 
「普段見ない姿ではあるけれど二人は歴とした婚約者同士。このようなパーティーには互いがパートナーになるのは常識だわ」
 
「それもそうですね。常識外れの人なので今日も学園に居た時のように多くの男子を侍らせているのかと思いましたよ」
 
「まぁ!ミゲルったら!」

 僕と義姉の会話を耳ダンボで聞いているであろう周囲はざわめいていた。
 それはそうだ。
 今日のパーティーには親達が多く出席している。噂で聞いたり息子や娘から直接聞いているものは兎も角、知らなかった人もいるだろう。王族の不祥事は貴族社会に大きな波紋を呼ぶはずだ。

「ああ、だからか」

「ミゲル?」

「王族の二人が見当たらない理由ですよ。大公女の不出来さをこれ以上晒したくないのでしょう」
 
「なるほどね。それはあるかもしれないわ。彼女の学友たちの大半は欠席しているもの。ありえない話ではないわ」

「親が家から出すのを拒んでいるんですかね?」

「あれだけの事をやらかしているのよ?数ヶ月で消える噂ではないわ。他にも兄弟が居るのなら余計に今日のパーティーは欠席させるでしょう」

「家名に傷がついた状態ですからね。親御さんたちは大変だ」

「第一王子も見当たらないようだし……恐らく大公女と一緒にいるのでしょうね」
 
「大方、お目付け役の一人にされているのでは?」
 
「まあ、婚約者を放ってはおけないのでしょう」
 
「そういえば第一王子は未だに学園に通ってますよね」
 
「辞める必要がないからでしょう」
 
「大公女が退学処分になったのでその時に一緒に辞めるのかと思いましたが……」
 
「流石にそれは無理でしょう。王家側が反対するわ。第一王子は何もしていないのだもの。まして、王立学園を途中退学という不名誉な事はしたくないでしょうしね」

 確かに不名誉極まりない。
 僕達の周囲もヒソヒソと話をしている。中にはクスクスと嗤っている人もいた。王族の醜聞を面白おかしく話しているのだろう。

 
「そろそろ終盤だわ」