その後も色々な場面が出てきた。

 時系列はバラバラだ。
 夢だからそれも当然かもしれない。



 入学早々、王太子と聖女の噂は学園中に広まった。場所も弁えずにベタベタイチャイチャしまくっていたら噂にもなる。隠す事を知らないらしい。


「私はルーチェを妻にする。なに、高位貴族の養女に入ればそれも叶う。高位貴族がダメなら下位貴族でもいい。母上の例があるから何も問題はないだろう」

 問題は大有りだ。
 平民出身だと言えども「聖女」だ。その肩書があれば貴族との養子縁組は可能と考えていたのだろうか?バカだ。
 その前に、どうして自分と父親である国王が同じだと思えるのか不思議だ。国王陛下は曲がりなりにも高位貴族の母を持つ身。しかも稀代の魔力量の持ち主でカリスマ性も十分ある。王太子とでは前提条件が全く違う。


 
 やはりと言うべきか。
 早い段階で聖女は王太子とその側近達と関係を持っていた。
 彼らから()()()()()()()()もいた。数人相手に同じ商品を受け取り、()()()()()()他の商品を全て高値で売りさばく姿は聖女と言うよりもやり手の娼婦にしか見えない。

 本当に孤児院出身か?
 娼館育ちの間違いじゃないのか?
 嫌に手慣れていた。
 
 それに気付かない男達はアホだ。
 まったく、彼女のどこがいいのかサッパリだ。
 僕なら全力でお断りするタイプの女だよ。
 あれじゃあ、誰の子供を孕むか分かったもんじゃない。
 だから前回は王太子以外の子供を産んだんだっけ。
 今回もそのパターンになる傾向が大いにある。


 学園から去ったからと言って油断はできないのかもしれない。
 あの大公女は僕を執拗に付け回していた。
 きっと何かある。

 この件で義父は期待できない。
 最悪、敵に回る可能性が高い。
 なにしろ、政治的には大公よりだ。

 頼るなら義母上だろう。

 公爵領は王都から離れているとはいえ、対策が立てられないことも無い。義姉上とも連携して備えなければ。


 まどろみの中、そんな事を考えながら静かに目を開けた。

 まだ薄暗い部屋の中。窓の外を見ると空はまだ暗いままだ。起きるには少し早い時間だが寝直す気にはならなかった。僕は起き上がると机に向かった。

 公爵領にいる義母に手紙を書くために。