暫く二人で他愛のない話をしていた。
 そんな中、辺境伯爵は少し真剣な表情になって口を開いた。


「公爵閣下、たとえばの話ですがブリジット様が誰かに殺されたとしましょう。その時、閣下ならどうなさいますか?」

「殺した犯人とその一族を皆殺しにする」

「即答ですね」

 何故か苦笑された。
 え?
 どうして?
 当然のことでは?
 でも、まぁ……。

「皆殺し以外なら長く生かして苦しめる……かな」

「生かすのですか?」

 そんな心底不思議そうな顔をしないで欲しい。
 僕だって鬼じゃない。
 まあ、前回は『力』がなかったから直ぐに殺しにいかなかっただけで、実際に『力』があれば拷問の限りを尽くして殺してやりたかった。

「死んだらそこで終わりだ。憎い相手ならなおさら苦しんで、苦しみ続けて『殺してくれ』と泣き叫ぶまで苦しめてから殺したいですよ。だってそうでしょう?僕の大切な人を奪っておいて一思いに死ぬなんて許せるはずないじゃありませんか」
 
「なるほど。そういう考えもあるのですね」

 しきりに感心する辺境伯爵って、もしかして一思いにヤッてしまうタイプ?
 それって結構優しいんじゃ……。

「辺境伯爵、ボコって終わりは一番相手に優しい方法ですよ」

「はははっ。これは閣下に一本取られましたな。てっきり閣下の事ですから殴って終わりにするのかと思いましたが……」

「いやいや、僕はそこまで優しくはないよ」

「優しいですか?」

「ええ!物凄く!!」
 
 力強く言い切るとまたもや苦笑いされる。
 何故だろう? 何かおかしい事を言っただろうか?
 
「閣下の話はとても参考になりました」

「そうですか?」

「えぇ、とても。ありがとうございます」

 深々とお辞儀をする辺境伯爵の姿に思わず照れ臭くなる。
 こう素直に感謝されると逆に恥ずかしいものだ。
 特に自分より年上の人だと恐縮してしまう。

「それでは私はこれで失礼いたします。この後予定がありますので」

「あっ、はい」

 辺境伯爵は微笑みながらその場を後にした。
 なんというか不思議な人だ。
 貴族特有の傲慢さはないけど何と言うか別の意味で貴族らしいというか。何だろう?言葉にするのが難しいな。ただ言えることは、彼にとってこの内乱はただの復讐ではない気がする。なにか別の目的があるような……いや、今はなにも考えない方がいいか。

 とりあえず……疲れたなぁ〜…………。