「おいッ!!逃げてんじゃねーぞゴラァ!!!」
「てめえの尻拭いすらできねえガキが!!いい気になってんなよ…!!」
「どこがいい気になってるように見えるんだよあたま沸いてんの?いつでも喜んで相手してやるけど、今日は予定変更。…あんたらと違ってこっちには守るもんがあるんだよ」
としてもわたしにできることなど、あるはずもなく。
気づいた瞬間には抱えられていた身体。
追っ手を撒くように狭い道だけを選び、ゆーみは走る。
「ガキんちょはとっくに寝る時間なんだけど?どうやってここに……ああ、スマホか」
わたしの手に握られている長方形。
彼はため息を吐くと、ばつが悪そうな顔をして明かりのない場所へ移動した。
「ニコちゃん最悪。あいつら川内(せんだい)会の連中だった。あーもう、また面倒事を増やしちゃったよ」
闇をまとう血のにおい。
けれど彼は傷ひとつなく、ぜんぶ他者から浴びた赤色だ。
「こんな使い方すんならスマホ没収。それは俺が居ないときもかどっこまいにちの更新を……って、こんな状況で寝ちゃってまあ」
夢のなか。
わたしは光いっぱいの場所で、ゆーみと笑いあっていた。



