「ああそうだ。矢野、ニコにあれ渡しといてよ」
「はい」
彼がいなくなって、矢野さんから渡されたもの。
それは小型の長方形だった。
電話もメールもできて、それだけじゃない機能に優れている現代の万能品。
“なにかあったときのために、大切に持っていなさい”
これはある意味、わたしがずっと欲しいと思っていたものだ。
でも今のわたしに渡してしまったことが、彼らの失敗。
(すごい…、調べただけでマップが出てくる…)
これならゆーみの居場所が分かる。
南浜町の中華街。
わたしはずっとずっと覚えていた。
このときのために、覚えていたの。
(ん…?事務所…?)
南浜町の中華街には雲雀会の事務所が複数ある───という、ネット記事。
ひばりかい……、
彼らがその名前を名乗っていることは、生活していくうちに自然と叩き入れられていた。
そこを目指せばきっと、ゆーみに会える。



