「おおおおれっ、カイト!!」
塀からひょこっと、キャップを後ろかぶりした少年が現れる。
真冬だというのに半袖短パン。
見ているだけで寒くなってきそうだ。
「ああ?テメェか?このサッカーボール飛ばして来やがったのは」
「そそそっ、そうだ!!オレのキックすごいしっ、その壺がザコなだけだしっ!!」
「ほー?しっかり出向いてくれたことは褒めてやろう。けどなァ……、どうしてくれんだガキゴラァ!!!」
「ぎゃあああああ!!!!」
どこの男の子だろう。
見知った顔でもなければ、この屋敷に平然と入ってくる子供なんか初めてだ。
まだ小学生と思える身なりで、舎弟たちから追いかけ回されている。
「おいっ、そこのおまえ!女!!見てるなら助けろよなっ!!」
「……?」
「おまえだよ!聞こえてねーのかっ、このブス!!」
わたしに何か言っているみたい。
指をさしてくるし、答えられないわたしにもっと騒いでいるようだ。



