「私は賛成です。学があって損をすることはありませんから」
「俺も別に反対ではない。けど、ニコちゃんが今生きてんのは暗黒大魔界なんだわ」
「…この世界で生きるにしろ、常識は必要かと思います。悪行は善行を知ってこそ働けるものですから」
「……まあいいや。いいんじゃない?やらせてみれば。矢野は計算とか得意だったし、無駄に学歴あるし、教えてやりなよ」
ということがあって、今に至る。
顔が広い彼らは秒速で先生を見つけてくれて。
どこから拵(こしら)えた人材かは不明だとしても、一見すると人の良さそうな先生たちだった。
英語、国語、数学。
とりあえずはこの3教科だけをやっておけば問題ないだろうと。
「回復はぜったい無理?」
「…はい。厳しいでしょう」
「ぜったい?」
「絶対です」
そしてわたしが関わるようになった人間は、他にもいた。
こうして定期的に屋敷へと足を運んでは、わたしの耳に触れてくる白衣姿のお医者さんだ。
そのときは必ず隣にゆーみがいて、先生に何度も聞こえない言葉を投げかけている。



