「…ニコ」
すくって、俺を。
たのむから救ってくれ。
ここで名前を呼んでしまう自分の弱さが大嫌いで、聞こえてないからって理由で今まで何度もこの子に理不尽にも押し付けてきた俺は。
今もまた、同じことを繰り返すんだ。
「だいじょうぶ、ゆうみ」
「…………」
「…私、いる」
「…………」
そーだよ。
そうやって掴んでないと俺なんか簡単に消えるんだ。
そこまでしないと俺をつなぎ止めることは難しいよ、ニコ。
震えているのは、俺の手だった。
「…だいすき。ニコちゃん」
兄貴につづいて屋敷に入る手前で、背中を向けながらの精いっぱいだった。
たぶん俺はこんな伝え方しかできなくて、面と向かって言うことなんかできないんだと思う。
どんな顔をすればいいのか、わからない。
ここに居てくれるとハッキリ言ってくれるおまえに、俺はどうしたって同じ言葉も確かな約束も返せそうにない。



