それから、しばらく兵頭組で過ごした。
だけど、樹さんの行動に振り回されてばかりだった。
樹さんは何気なく接しているんだろうけど、私にとっては刺激が強いもので・・・。
私・・・樹さんのことどう思ってるんだろう。
樹さんの行動にこんなに反応しちゃうなんて、どうかしてる。
そう考えながら廊下を歩いていると、近くの部屋から話し声が聞こえてくる。
「なぁ樹、お前いつになったら行動に移すんだよ」
「は?」
声からして、圭介さんと樹さんだろう。
だけど、なんの話しをしてるのかな?
「とぼけんなって〜、あの子のこと好きなんだろ〜?」
「うるせぇ、大事な奴ってだけだ」
そんなことを考えている時に聞こえてきた声・・・それは、私の胸を締め付けるのに充分すぎるものだった。
樹さん・・・大事な人がいるんだ・・・。
それは・・・なんか、嫌だな・・・。
でも、なんで・・・?
「ほぉ、あの樹が大事な子がいるとはね〜・・・」
「うるせぇ、テメェにも1人や2人いんだろ」
「残念ー、俺はいませーん」
さすがに立ち聞きは悪いと思い、その言葉を聴きながら廊下を歩いていく。
樹さんの大事な人・・・か。
知りたい・・・だけど、知りたくない。
・・・その大事な人が、私だったらいいのに。
そう考えて、ふと我に返る。
どうしてそんなこと思うの・・・?
そんなの、樹さんが好きみたいじゃん。
だけど、大事な人がいるってわかってこんなに胸が苦しくなってるってことは、そういう事なんだろうな。
あーぁ・・・失恋確定の恋しちゃったな・・・。
段々気分が落ち込んでいって、歩くスピードも徐々に落ちていく。
うつむきながら歩いていると、目の前に誰かの足が見えた。
「あれ?芽依ちゃん?どうしたの?」
顔を上げると、そこには心配そうに私をのぞきこんでいる新一くんがいた。
パッと見る限り風呂上がりなのだろう、首にタオルをかけている。
「!!新一くん・・・。いや、なんでもない」
「なんでもないって顔、してないよ。どうしたの?話聞くよ?」
優しい口調の新一くんに、思いの丈を全部ぶちまけてしまおうか。
そう思ってしまうぐらい、この苦しい気持ちを誰かに聞いて欲しかった。
「・・・うん、お願いしようかな」
少し気が引けるけど、この苦しい気持ちが少しでも和らぐなら・・・。
そう思い、新一くんにお願いをした。



