兵頭組の屋敷まで戻ると、車から荷物を持って中へと入っていく樹さん。
そのあとをおずおずと入っていく。
昨日もだったけど、改めて入っていくのなんか緊張するな・・・。
「お邪魔しまーす・・・」
「別にここに住むんだから“お邪魔します”じゃなくて“ただいま”だろ?」
「え・・・た、ただいま・・・」
「あぁ、おかえり。・・・お前の部屋行くぞ」
樹さんに訂正されて言い直すと、満足したような表情を浮かべて歩き出す。
彼の隣を歩きながら部屋まで向かっていく。
すると、矢吹さんが前から歩いてきた。
「あぁ。おかえり、お嬢さん」
「た、ただいま帰りました」
その場に立ち止まる矢吹さんに対し返事をする。
ただいまって言うの、なんか慣れないな・・・。
いつもは言っても返事が返って来ることは無いからって言ってなかったし。
「樹もおかえり」
「あぁ」
優しく微笑みながら樹さんに視線を向ける矢吹さん。
樹さんはそんな矢吹さんに短く返答をする。
「おっ、荷物取ってきたんだな。お疲れさん」
樹さんの持ってる荷物を見て、察する矢吹さん。
「なぁ、お嬢さん知ってるか?樹のヤツ、俺がお嬢さんの迎え行くって言ったら、鬼の形相で“俺が行く”ってムキになってたんだよ。用事があるって言ってたのにな」
「え?」
「おい、圭介・・・!」
矢吹さんが笑いをこらえながら私に教えるのに対して、とがめるように声を上げる樹さん。
矢吹さんの言うことが正しければ、樹さんは用事があったにも関わらず私の迎えに来て荷物を持ってくるのを手伝ってくれたってことになる。
大丈夫だったのかな?
「こいつ、態度にはあんま出さねぇけどお嬢さんのこと──」
「圭介っ・・・!!」
慌てたように矢吹さんを睨みつけながら言葉を遮る樹さん。
少しだけ頬が赤くなってるようにも見える。
「あはは、怖い怖い。じゃ、また夕飯の時にな〜」
そう言って手を振って歩き出す矢吹さん。
何がしたかったんだろ、矢吹さん。
「ったく・・・圭介のヤロー・・・余計なこと言いやがって・・・」
樹さんは矢吹さんの後ろ姿を睨みつけながら呟く。
だけど、矢吹さんの言うことが本当なら用事があったはずなんだよね。
私の迎えとか荷物を取りに行ったりとかして大丈夫だったのかな?
「あの、樹さん。さっき矢吹さんが言ってた用事、大丈夫だったんですか?」
「あ?・・・あぁ、大丈夫だ。速攻で終わらせた。お前が気にすることじゃない」
空いた方の手でポンッと頭を撫でながら歩き出す樹さん。
い、今・・・頭・・・撫で・・・!?
「そ、そうですか・・・」
急なことに動揺してうつむきながら樹さんの隣を歩く。
な、なんでこんなに動揺してるんだ・・・?



