屋敷の案内をしながら前を歩く樹さんを追いかけるように、周囲を見渡しながら小走りでついて行く。
さっきから案内以外で全然喋らないけど・・・本当に屋敷の案内頼んでよかったのかな?
いや、自分から申し出たんだから嫌ではないんだろうけど・・・。
「・・・おい」
「なんですか?」
歩きながら声をかけられ、樹さんのことを見る。
だけど、樹さんとは視線は合わなかった。
「・・・悪かった」
「え?」
あの時がなんのことか瞬時には分からず、キョトンとしてしまう。
私、樹さんが謝るようなことされたかな?
「あの時俺を助けたせいで、こんな事になったから。お前に迷惑かけちまったな」
うつむきがちに横を向いて庭を眺めながら謝罪の言葉を発する樹さん。
その表情は憂いを帯びていた。
「え、そんな・・・気にしないでください。私が好きでやったことなので」
「・・・そうか。・・・礼を言うのが遅れた。あの時は助かった。サンキュな」
樹さんは私の方を向くことなくお礼を口にする。
彼の耳は少しだけ赤くなっているように見えた。
「いえ、当然のことをしただけですから。むしろ、すぐに元気になって良かったです」
「・・・・・・そうか」
ガシガシと頭をかいたあとに短く返す樹さん。
照れてる・・・のかな?
「・・・ここまで通ってきたところにあった部屋はここにいる連中の部屋だ。用事がない限り近付くなよ」
「わかりました」
話をそらすように、部屋の案内を始める樹さん。
だから部屋があっても素通りしてたんだ。
「ここが居間だ。基本的に飯とかはここで食うことが多い。時間は朝7時、昼12時、夜7時だ。覚えとけ」
「はい」
樹さんが襖を開けると、そこはローテーブルが並んだ部屋だった。
部屋の隅には、座布団が積み重ねられている。
ここでご飯を食べるなら、この場所は頭に入れておかないと。
「ここで全部だ。迷ったならその時は聞け、教える」
「はい、ありがとうございます」
私の方に振り返りながら案内が終了する。
結構広かったから覚えるのに時間がかかりそうだ。
しばらくは迷子になることを覚悟しとかないとかな。
「・・・お前、飯食ったのか?」
「え、いえ・・・学校が終わってすぐにバイトに言ったので・・・」
「・・・来い」
そういうと、樹さんはどこかへと向かっていく。
私は、言われるがままについて行くことにした。



