🍞 ブレッド 🍞 フィレンツェずニュヌペヌクずパンず恋ず倢ず未来の物語【新線集版】

「いらっしゃいたせ」

 顔䞀぀分ルチオより背が高かった。
 䜕やらむタリア語のような蚀葉でルチオが語りかけるず、圌はさかんに頷いおいた。

 話が終わるず匊に芖線を戻し、「跡を継いだアントニオです。ようこそいらっしゃいたした。遠慮なさらないでなんでもお奜きなものを召し䞊がっおください」ずルチオず同じような口調でパンの方に掌を向けた。

「ありがずうございたす。でも  」

 どれを遞んだらいいのかさっぱりわからなかった。
 䜙りにも皮類が倚すぎお目移りしおいたのだ。
 しかしそれを遠慮ず勘違いしたのか、アントニオが新しいトングに手を䌞ばしお次々にパンを匊が持぀トレむに乗せた。

「これがカプレヌれのパニヌノで、これがクアトロフォルマッゞ、そしおこれがルッコラずプロシュヌトのピッツァ。さあどうぞ」

 アントニオが窓偎にあるテヌブルを指差した。
 むヌトむンコヌナヌだった。
 蚀われるたたにテヌブルにトレむを眮くず、ルチオがニコニコしながらカップを䞡手に持っお怅子に座った。
 そしお、カプチヌノだず蚀っお、倧きなカップを匊の前に眮いた。
 右手に持぀小さなカップぱスプレッ゜のようだった。

「どれもおいしいよ」

 早く食べなさいず促すように䞡手を前に出した。
 頷いた匊は色合いの良さに惹かれおカプレヌれのパニヌノに手を䌞ばした。
 トマトの赀ずモッツァレラチヌズの癜ずバゞルの緑が鮮やかだったからだ。
 䞀口かじるず、オリヌブオむルずレモンの颚味が加わっお口の䞭いっぱいに至犏が広がった。

「ボヌノ」

 思わず口からむタリア語が出たが、それは日本語発音そのたただった。
 しかしそれでも十分に䌝わったようで、ルチオは右手の芪指を立おお笑みを浮かべた。

 カプレヌれを食べ終わるず、ルッコラずプロシュヌトのピッツァに手を䌞ばした。
 トマト゜ヌスの䞊にルッコラが乗り、その䞊にプロシュヌトが芆いかぶさっおいる。
 誘われるようにがぶっずいくず、トマト゜ヌスの酞味ず甘みにプロシュヌトの塩味が合わさっおなんずも蚀えないハヌモニヌが口の䞭いっぱいに広がった。

「ブォヌノ」

 今床はむタリア語らしい発音で蚀っおみた。
 ルチオはニコニコしおいた。

 最埌に手にしたのは、ピッツァの生地の䞊にチヌズが溶けおいるものだった。

「クア  」

 アントニオの蚀葉を思い出そうずしたが、最初の二文字しか浮かんでこなかった。

「クアトロフォルマッゞ」

 ゆっくり発音したあず、クアトロは数字の4で、フォルマッゞはチヌズだず説明しおくれた。
 モッツァレラ、ゎルゎンゟヌラ、ペコリヌノ、パルミゞャヌノの4皮類のチヌズがトッピングされおいるのだずいう。
 䞀口かじるず、パンチの利いた濃厚な味がガツンず抌し寄せおきた。
 䜙りの矎味しさに口を開きかけるず、「ブオノ」ずルチオが先に声を出した。
 悪戯っぜく片目を瞑っおいた。
 真䌌をしお「ブオノ」ず匊も蚀った。

 玠晎らしい、ずでもいうように䞡手の芪指を立おたルチオが、むタリアのパンが眮かれおいる棚に芖線をやっお匊の方に戻した。

「pizza(ピッツァ)の意味を知っおいるかい」

 匊は銖を暪に振った。

「『平らに朰す』ずいう意味のラテン語が語源なんだよ。むタリア語で『匕っ匵る』ずいう意味もあるがね。それから、focaccia(フォカッチャ)は『火で焌いたもの』ずいう意味だし、ciabatta(チャバッタ)は『スリッパ』ずいう意味だよ。圢が䌌おいるから名づけられたんだ。それから」

「父さん」

 なおも説明しようずするルチオをアントニオが窘(たしな)めた。

「ごめんね。むタリアのパンのこずをしゃべり始めたら父は止たらなくなっおしたうから」

 しかし嫌ではなかったので倧きく銖を暪に振っお、退屈ではないこずを䌝えた。

「ほら」

 ルチオが顎を䞊げおアントニオを芋䞊げるず、「はい、はい」ず退散するように奥に匕っ蟌んだ。