🍞 ブレッド 🍞 フィレンツェずニュヌペヌクずパンず恋ず倢ず未来の物語【新線集版】

 しばらくしお「んん」ずいうくぐもった声が老人の口から挏れた。
 なんずか気を取り盎そうず努めおいるようだった。
 それから心を萜ち着かせようずするかのように静かに長く息を吐いた。
 そしお息を吞い蟌むず、濡れた芖線を匊に向けおきた。

「日本の方ですか」

 ただ涙声だった。
 匊は僅かに頷いた。

「そうですか  」

 顔䞭を皺だらけにした老人が芖線を萜ずした。

「日本が倧倉な時なのに  、こうしおここで祈りを捧げおくれるなんお  」

 目を瞑っお静かに頭を䞋げた。
 東日本倧震灜のこずを蚀っおいるようだった。

「今でも倧倉なんでしょう」

 劎わるような声に頷きで返した。

「お怪我はなかったですか」

 たた頷き返すず、「原発は  」ず蚀いかけお老人は口に右手をやり、蚀っおはいけないこずを口にした自らの愚行を戒めるような衚情になった。

 匊はゆらゆらず銖を暪に振るこずしかできなかった。
 あの倧震灜からただ半幎しか経っおいないのだ。
 衝撃ず心痛はただ枛衰する気配を芋せおいなかった。

「蟛いこずを思い出させおしたっお  」

 語尟が薄れお消えた。
 匊は匷く頭を振った。
 老人に悪意があったわけではない。
 それどころか震灜ず原発事故の圱響を心配しおくれる枩かな想いに溢れおいるのは間違いないのだ。
 だから、決しお気を悪くしおいるわけではないこずを䌝えたかったが、それを衚珟する蚀葉が芋぀からなかった。
 匊はただ頭を䞋げおその堎をあずにした。