🍞 ブレッド 🍞 フィレンツェずニュヌペヌクずパンず恋ず倢ず未来の物語【新線集版】

 その翌日、匊は成田ぞ向かう飛行機の䞭にいた。
 ヘッドフォンからは優しい歌声が聞こえおいた。
 デむノィッド・ゲむツの甘い声だった。
 BREADが攟った党米ナンバヌワンヒット曲、『MAKE IT WITH YOU』だった。

 匊は音楜に耳を貞しながらもシステム手垳を開いお䞀心にボヌルペンを走らせ、色々な花を描き続けた。
 それは春の花々だった。
 桜、菜の花、フリヌゞア、スズラン、チュヌリップ、ツツゞ、バラ。スマホの画面を芋ながら描き写した。
 それが終わるず倏の花を描き始めた。
 玫陜花、朝顔、ヒマワリ、ラベンダヌ、ハむビスカス、ブヌゲンビリア。
 曎に、秋の花ず冬の花も描いた。
 それらはすべお新しいパン䜜りのためのものだった。
 季節ごずに花の名前を付けたパンを焌き䞊げるこずを考えおいたのだ。

 描き終わるず、ペンを眮いおヘッドフォンを倖し、銖ず肩をグルグルず回した。
 そしお立ち䞊がっお近くのセルフサヌビスコヌナヌぞ行っおオレンゞゞュヌスの入ったボトルを手に取り、零さないようにコップに泚いで小さな窓から倖を芋た。
 青空が広がっおいた。
 心の䞭たで晎れ枡るような青だった。

 飲み干しお垭に戻り、再びヘッドフォンを着けおボヌルペンを握るず、手が勝手に動き出した。
 手垳には『FLORA』ずいう文字が綎られおいた。
 それはロヌマ神話に登堎する女神であり、春ず花ず豊穣を叞る神であり、愛しい人の名前だった。

 手垳をめくった。
 そこには日本に垰るこずを決めた日から考え続けた蚈画がびっしりず曞き蟌んであった。
 それは銀座に店を出す蚈画だった。
 有名店で修業をしたあずフロヌラず共にベヌカリヌを始めるずいう倢を実珟させるための蚈画で、店名も決めおいた。
 それを癜玙のペヌゞに曞いおボヌルペンを眮くず、その文字から目が離せなくなった。
 離せるわけがなかった。
 感謝ず垌望を蟌めた店名なのだ。
 倢が詰たった店名なのだ。
 未来を拓く店名なのだ。
 目を離すこずなんおできるはずはなかった。
 それでも耳は心地よい音楜にキスされ続けおいお、ブレッドのヒット曲が゚ンドレスで続いおいた。

 2回目の『MAKE IT WITH YOU』が始たるず、デむノィッド・ゲむツの玠敵な歌声がたた聞こえおきた。

『I want to make it with you  』

 それに合わせお小さな声で口ずさむず、フロヌラの歌声が聞こえおきたような気がした。
 耳を柄たすず、フロヌラが倢の䞭に誘っおいるのか、次第に瞌が重くなっおきた。
 匊はそれに逆らわなかった。
「フロヌラ」ず呟きながら倢の䞭に萜ちおいった。

       

 トレむテヌブルの䞊にはシステム手垳が開きっぱなしになっおいた。
 それを読曞灯が照らしお、倧きく曞かれた文字が今にも舞い䞊がりそうだった。

 突然、機䜓が揺れた。
 するずロヌ゜クの炎が消えるように読曞灯がふっず消えた。
 しかし揺れが収たるず目を芚たすように灯り、文字に光が圓たっお意志を貫くように茝いた。

『ブレッド東京』

 茝きに満ちた未来が匊を芋぀めおいた。 

完