🍞 ブレッド 🍞 フィレンツェずニュヌペヌクずパンず恋ず倢ず未来の物語【新線集版】

 仙台垂の街䞭に入るず海岞付近ずは様子が違っおいお、損傷は限定的なようだった。
 そのこずを口にするず、即座に吊定された。

「あのホテルはもう䜿えないんですよ」

 運転手が指差した先には倧きな建物があり、倖芋に異垞はないように芋えたが、そうではないずいう。
 内郚に亀裂が入っお危険なので宀内ぞ入るこずは犁止されおいるずいうのだ。
 それを聞いお、芋た目では刀断できないこずを知らされた。

「そんなホテルがあちこちにありたす。もちろん、ホテルだけではありたせん。䞀般の䜏宅も倧きな被害を受けおいたす」

 宮城県だけで党壊が8䞇戞以䞊、半壊が15䞇戞以䞊あるのだずいう。
 フロヌラは接波被害にばかり気を取られおいたが、地震による被害も甚倧だずいうこずをたたもや思い知らされた。
 マグニチュヌド9、震床7ずいうのはフロヌラの想像をはるかに超えるものだった。

 蚀葉を倱っおいるず、運転手が震灜圓日のこずを話し始めた。

「あの日私は非番で、家族を乗せお東北自動車道を北ぞ向かっお走っおいたした。するず、いきなり倧きな揺れが来たした。車が飛び䞊がるくらいの揺れで、䞀瞬䜕が起こったのかわかりたせんでした。それほど倧きな揺れでした。今考えるず、無事だったのが信じられないくらいです」

 そしお地震発生時の生々しい話が続いた。

「なんずか家に戻るこずができたしたが、電気も、氎も、ガスも䜿えず、電波も通じず、呚りで䜕が起こっおいるのかの情報も入らず、その䞊、明かりも、暖房もない䞍䟿な生掻に盎面したした」

 そこで声のトヌンが䞀気に萜ちた。

「その埌しばらくしお電気が通ったので、やっずテレビを芋るこずができたした。しかし、付けた途端、信じられない光景が目に飛び蟌んできたした。その時初めお知ったのです。地震ず接波の被害の倧きさを。家族党員愕然ずしたした」

 するずあの日テレビで芋た地獄のような光景が蘇っおきお心臓に痛みのようなものが走ったが、運転手の話はそれで終わらなかった。

「昔、倧きな地震を経隓しおいたす。昭和53幎に起きた宮城県沖地震です。圓時、私は小孊生でした。その時も倧きな揺れず䜕日も続いた停電による暗い䞭での生掻の蚘憶が残っおいたす。でも今回は地震だけでなく、接波の被害が重なりたした。それも信じられないほどの接波がすべおのものを飲み蟌んでいきたした」

 するずフロヌラの脳裏にたたあの映像が蘇っおきた。
 人も車も家もあらゆるものが飲み蟌たれおいく凄たじい光景だった。
 たたもや心臓に痛みのようなものが走っお耳を塞ぎたくなったが、運転手は原発事故による恐怖を語り始めた。

「原発事故から3日目に雚が降りたした。するず『今晩の雚には犏島の原発事故によっお攟出された攟射性物質や被害を受けたコンビナヌトの有害物質が含たれおいる可胜性がありたす。絶察に济びないように』ずいう通達が回っおきたした。それを芋お恐怖に震えたした。それだけでなく、朝から晩たで䞊空を自衛隊機が飛び回っおいお、たるで戊堎のようでした」

 しかもそれに加えお深倜や早朝に匷い䜙震があり、それも毎日䜕十回もあっお、怯えながら暮らしおいたずいう。

「そんな䞭、氎や食料をかき集めるのにずおも苊劎したした。それだけでなく、地震から1週間埌に季節倖れの倧雪が降るずいう匱い者虐めのようなこずが起こりたした。寒くお寒くお震えあがったので暖房甚の灯油を買いに行ったのですが、近くのガ゜リンスタンドにはポリタンクを持った人が䜕癟人も䞊んでいたした。それでもわずかな期埅を持っお䞊び続けたのですが、残念ながら灯油を買うこずはできたせんでした。仕方がないので、服を䜕枚も重ね着しお毛垃を巻き付けお過ごすしかありたせんでした」

 フロヌラはフィレンツェの冬を思い出した。
 氷点䞋になるこずもある寒さの䞭で、暖房のない生掻は想像できなかった。
 思わず䜓に震えが走ったが、その時、運転手の声の調子が倉わった。

「長々ず圓時のこずを話しおごめんなさいね」

 フロヌラの衚情が曇っおいるこずに気が぀いたのか、前を芋ながら運転手が頭を䞋げた。

「いいえ、貎重なお話をありがずうございたした」

 頭を䞋げた時、赀信号で車が止たった。
 それを埅っおいたかのように運転手が振り向くず、穏やかな顔に倉わっおいた。

「倧倉だったですけど、本圓に倧倉だったですけど、でもね、䞖界䞭の倚くの囜から心枩たる支揎を頂いお感謝しおいるんですよ」

 むタリアからオペラ歌手が来日しお被灜地を巡回慰問したこず、東京などでチャリティヌコンサヌトを開いお集たった募金を寄付しおくれたこず、などを笑みを浮かべながらありがたいずいう口調で䌝えおくれた。

「こちらこそ、ありがずうございたす。そう蚀っおいただいおずおも嬉しいです」

 フロヌラは仙台に来お初めお笑みを浮かべた。
 その時、信号が倉わっお暪の車が動き出したので運転手は慌おお顔を前に戻しお車を発進させた。

 少し走るず仙台駅が芋えおきた。
「もうすぐ着きたすから」ず蚀ったあず、運転手の声が明るくなった。

「た、これからも倧倉ですけど頑匵りたすよ」

 無理に元気な声を出しおいるようにも感じたが、心の痛みが少し軜くなったような気がした。

「今日は本圓にありがずうございたした」

 頭を䞋げお車を降りた。