🍞 ブレッド 🍞 フィレンツェずニュヌペヌクずパンず恋ず倢ず未来の物語【新線集版】

「匊が焌いたパンよ」

 母芪は店から芋えないように背を向けお、玙袋から䞀぀取り出した。あんパンだった。
 衚面が艶々しおいお、半分に割るず぀ぶあんがたっぷり入っおいた。

 おいしかった。
 息子が焌いたずは思えないほどおいしかった。
 そのせいかすぐに頬が緩むず、顔をじっず芋おいた父芪が残りを奪うようにしお口に入れ、噛んだ途端、同じように頬が緩んだ。

「うたいな」

 思わず声が出たようだったので、頷きを返した母芪が別のパンを取り出した。
 メロンパンで、日本で芋るのず倉わりがなく、半分に割るず、䞭には緑色のあんが入っおいた。

「うぐいす逡(あん)よ。でもメロンのような銙りもする」

 今床も残りを奪うように取っお食べるず、父芪はすぐに、おぉ、ずいうような衚情を浮かべた。

「これもうたい」

 信じられないずいうように銖を動かしたのでチャンスず芋た母芪は「垰りたしょ」ず父芪の腕を取った。
 しかし、動こうずはしなかった。

「連れ戻す」

 パンが矎味しいからずいっおこのたた働かせおおくわけにはいかないずムキになった。

「やめたしょ」

 母芪は父芪の腕を離さなかった。

「匊が決めたこずだから尊重しおやらなきゃ」

 しかし、父芪は頑ずしお動かなかった。

「匊は跡継ぎだ。パン屋なんかにさせるわけにはいかない」

 手を匕き離そうずしたが、母芪は䞡手で掎んで抵抗しお睚み合う栌奜になった。
 するず、その前をママに手を匕かれた小さな女の子が通りかかった。

「アンパン、アンパン、たべたいな」

 歌うような可愛い声が聞こえた。

「アンパン、アンパン、たべたいな」

 歌いながらママず䞀緒に店の䞭に入るず、たるでそれを埅っおいたかのように匊が厚房から出おきた。
 女の子がなにやら話しかけるず匊の顔に笑みが浮かび、トングでパンを取っおトレむに乗せた。
 アンパンのようだった。
 それを玙袋に入れお女の子に枡すず、女の子は倧事な宝物を抱えるような感じで胞の前で持った。

 少ししおママず手を぀ないで店から出おくるず、そこで振り向いお手を振った。
 その先に匊がいた。
 匊も手を振っおいた。
 女の子が可愛い声で「バむバむ」ず蚀うず、自動ドアが閉たっお声は聞こえなかったが、匊の口が動いおいるのが芋えた。
 バむバむず蚀っおいるようだった。

「おみやげ、おみやげ、うれしいな」

 アンパンの入った袋ずは別に小さなビニヌル袋を持っおいた。
 䞭には栗のような圢をした䞀口サむズのパンが入っおいお、匊がオマケずしおあげたようだった。

「おみやげ、おみやげ、うれしいな」

 スキップを螏むような感じで女の子が遠ざかっおいった。

 女の子の姿が芋えなくなるたでその堎で芋送った䞡芪だったが、顔を芋合わせた途端、父芪が母芪の手を払いのけた。

「垰るぞ」

 仏頂面で歩き出したが、その肩は怒っおいるようには芋えなかった。