一刻も早く優衣に存在を気かれる前にこの場から消えないと。 ひとり徒競走でもするようにせかせかと歩いていく。 でもそんな努力は虚しくて。 「すみれ、どこ行くの」 大きな声でもないのに嫌と言うほど耳にスッと届いて、ガッチリと体が固まる。 怒ってる。 絶対怒ってる。 今まで感じたことないほど背中からとてつもない圧を感じて後ろを振り向けない。 だからといって無視などできるはずはなくて。 恐る恐る後ろを振り向く。 窓から顔を出す見惚れるぐらいにきれいな黒髪がふわりと揺れていて。