「なんの用なの?」
『別に用なんてないよ。ただ菫って少し目を離した隙に他の男といるから捕まえとかないと』
そうやって冗談なのかどうか分からないこと言うから困るの。ひとりで振り回されて。
「……別に誰にも捕まらないから」
もう、可愛くないったらありゃしない。
こうゆう時に他の子はどう言ってるんだろう。どう言って優衣を堕とすんだろう。
「……そんなの言ってられるの今のうちだよ。俺は菫に捕まったから。釣った魚にちゃんと餌あげてね」
「……っ、」
な、によそれ!!
そんな勝手に網に入ってきただけじゃん!!
スルスルって、手すりを背にして座り込んで優衣からはわたしが見えなくなった。
考えてみたら今まで何回優衣に告白チックなことを言ってもらったんだろう。
わたしはそんな優衣に甘えて、大事な時間を無駄にさせているかもしれない。
「は?なんで消えた?」
「なんか申し訳ないから」
「はい?」なんて困惑している優衣の声を聴きながら体操座りをして、静かに顔を自分の腕に沈める。
だって、さっきまであんなに優しくしてくれた人に会えるようなツラしてないもん。
「優衣って」
「はい」
「……」
電話だと、ちょっと声低いんだ……。
「なんでもない!!」
「はぁー?」
たったひとり。
もう声の聞こえてこない携帯を置いて、またもう一度顔を埋めた。
何がどうなって、いつからあんなに、優衣は積極的になったんだっけ。
もう思い出せない。
早く、決めないと。
そんなことを考えながらわたしは真冬に差し掛かる冷たい空気に晒されなれながら、夕ご飯までベランダにいた。



