「優衣くーん」
「あ、椿か」
少し焦った顔の優衣くんにすぐに違和感を覚える。
でもそれは一瞬ですぐに普通に戻った。
「ごめん。急いでるよね」
「大丈夫だよ、そんなの」
大丈夫、なんて言ってるけど明らか焦ってるじゃん。
噓言う優衣くんをからかいたい気持ちもあるけど、急いであげたほうがいい。
「体育祭なんて時に申し訳ないけど、お父さんが次は会食を、だって。もちろん断っちゃってもいいから」
「せっかくだしいいね。
予定とかの連絡したいし、連絡先交換しよ」
「あ、そうだね」
ポケットからスマホを出して、ちょこちょこっと作業したらあたしの携帯に優衣くんの連絡先が入っている。
なんか、夢みたい。
「ありがとう!
ほんとそれだけだったから、ごめん。呼び止めちゃって」
「いいって。会食楽しみにしてる」
歩いていく優衣くんの背中を見ながら、ぎゅっと携帯なんて抱きしめちゃった。
ドクドクうるさい心臓をなだめたかったし、大切で大事のものを放したくなかった。
前回、優衣くんのお母さんの帰国でなくなってしまった会食。あの時は正直、もう優衣くんに合わなくていいことに少し安堵してたけど今は違う。
ただ会食の日が楽しみだった。



