近距離恋愛はむずかしい




そんな言葉に顔を上げた。

そこには嫌になるぐらい優しく笑う優衣さまがいた。




「二人で決めよう」




ドクン、と心臓がなった。
やっぱりこの人は王子様だ。あたしから見たらどの絵本の王子様にも負けない。

こんなにかっこよくて、優しくて、他人を思いやれて。



つらい。




「そうだね。ふたりで」




今のできる限りの笑顔を優衣さまに捧げたら。

優衣さまったら、女の子みんなにこの顔してたらみんなに惚れられちゃいますよ。

また菫のお仕事が増えちゃう。




「……優衣くん」

「うん」

「今日は会いに来てくれたありがとう。着物は似合ってるかな?」



少しでもこの気持ちを隠すために、ヘラヘラ言う。



「たぶん、世界中探してもこの着物をこんなに着こなせるの椿だけだよ」




つらい。



つらい。



負けることが分かってるからつらい。



でも。




「ありがとう!」




恋に落ちる音は聞こえた。