近距離恋愛はむずかしい




掴まれた顎のせいで少し上を向いた状態で固定されて優衣と話す。

それがなんだかいたたまれない。

もう目もそらさないし、無視したりもしないから顎から離してもらってもいいのに。



「優衣……?」

「なに?」

「あの、手を」



――――――どかしてくれたら。



なんて言葉はつながらなかった。



シーンと、静まる空気。


だってむしろしっかりと握り直されたから。



ぐっと近づいてきた優衣の顔に思わず身構える。
けど優衣は残り20センチのところで止まった。

しっかりと状況理解ができなくて自分も、もう頭なんて働いてなかった。




「優衣、どいて」




緊張から息が乱れる中、必死に声を発した。


頭からピーって音でも出るんじゃないかと思うぐらい頭が熱い。

血でも沸騰してるんじゃないの。




「菫がちゃんと思い出せたら、どく」




顎の手が外れるどころか次は頬に添えられて、心臓がドキン!!と跳ね上がった。


思い出す、なんて



「なんのこと」

「この状況でも思い出せない?」




優衣の言葉の意味が分からない。




「酷いね。俺が言ったこと全部なかったことになってるんだ。菫のなかで」

「…っ」




わたしの背中へと回った手が。



ぐっ、て。



わたしごと自分に近づけた。


その距離、10センチ。