「俺が、どうしても菫に聞かせたくなくて。
この空間にいて欲しくなくて、連れ出した」
頭の上からびっくりするぐらい弱い声で言われたから目を丸くする。
「しかも泣いてたし。
そんなの見たら判断力鈍っちゃって」
連れ出しちゃった方が後々めんどくさい事になることまで頭回んなかった。
そこまで言われて、目元がうるっときた。
咄嗟に唇を噛んで耐えるけど、頭はよりパニックに。
「わかんない。
優衣のこと、全然わかんない」
だって、なんで聞かせたくないかもわかんないし。
なんでわたしが泣いたら判断鈍るかもわかんないし。
「わ、わたしは…優衣のメイド、です。
幼い頃からいっぱい練習してきて、お茶の入れ方とかネクタイの締め方とか、もっといっぱい教えられて」
将来ずっーと、優衣の近くでお仕事できるようにいっぱい頑張ってきたのに。
「でもきょ、今日のことで全部パーになっちゃったかもじゃん」
散々お母さんから言われてきたこと。
『主人とは程よい距離を』
明らかに今日の行動はその言葉に反していて、きっと周りのみんなから見たらわたしなんて全然優衣のメイドに適してなくて。



