「菫、元気にしてた?」
きれいになびく漆黒の長髪が、わたしの頬に当たって少しくすぐったい。
ひとしきり抱きしめられたあとはほっぺを両手で包まれて、奥さまと目が合う。
優衣と同じ。
茶色くて美しい瞳に見つめられるのはなんだか気恥ずかしい。
上品な青色のワンピースを着て、耳には小さなパールのピアス。靴は低めのハイヒール。
ワンピースの裾がふわっと浮く感じとか、徹底的に全てがお姫様。
何度会ってもその美貌に圧倒されるし、やっぱり優衣の母親には見えない。完全にお姉ちゃん。
「はい!元気にして奥さまの帰りを待ってしました」
「わたしもすみれに会うのもずっと楽しみにしてたの!!」
次は指でむぎゅっーと摘まれるほっぺた。
こうやって小さいころから自分の子供のように、わたしを可愛がってくれる奥さま。
懐かしい感覚がうれしくて、思わず口角を上がってしまう。
そのとき、ふいに焦点がはずれて奥さまの背後に見える優衣が鮮明に映った。
「……」
ちょっと不貞腐れたような、優衣の視線に嫌に心臓がキュ、となる。
なんだろう、この怒られてるような感覚。
思わず優衣から目が離せなくなっていると、わたしと目が合ったことわかった優衣はニヤッと笑って。
あ、知ってる、こんな顔する優衣のすることなんてだいたいろくでもないことぐらい。



