近距離恋愛はむずかしい





「今川さん、これお願いしてもいい?」




そんな声が聞こえて、くるりと体の向きを変える。


そこにいたのは担任。



何やら重そうにプリントの束を抱えている。


わたしの周りにいる人たちはそんなこと気にした様子はまったくなくて、そそくさと帰る準備を進めていく。



なんでこの人は毎回毎回こうも放課後に言ってくるのか。



「はい、いいですよ」

「本当に!!」




そして毎回毎回断れないわたしはなんなのか……。




『お人好しで善良なすみれが出てるぞぉ〜』



なんて、なんのフォローにもなってない言葉でグサグサわたしを刺してくる頭の中の天使ちゃんと



『何が善良だよ。自分を苦しめてるだけだろ』



なんてこれまたきついことをグサグサと言う頭の中の悪魔ちゃん。



二人の意見は嫌という程わかってるよ。

わかってるけどさぁ〜。


なんて言ってる隙にドサッと重たいプリントがわたしの机にのる。



「じゃあ、終わったら職員室まで届けて」



そう言い残すと足早に教室をでていった。