狂愛×シンデレラ


 シンデレラはにこやかにガラスの靴を受け取る。

「ありがとうございます」
「ちょ、ちょっと灰かぶり(シンデレラ)!?」

 さらに動転する姉たちを無視して、シンデレラは舞台袖ぎりぎりまで後退し、がさごそと何かを漁る。取り出したのは、もう片方の靴だった。

「……!!」

 姉たちは言葉も出ないようだ。

 両足揃ったガラスの靴に足を滑り込ませ、くるりとターンして、シンデレラは笑う。

「見つけてくださったのですね、――王(・)子(・)様(・)」

 兵士が兜をはずすと、あらわになったのは言わずと知れた王子の顔。
 とうとう姉たちが腰を抜かした。

「ああ。約束どおり、迎えにきた」

 王子がそう言ってパチンと指を鳴らせば、シンデレラがふわりと浮かんで王子の腕へ収まる。魔法で浮いているおかげで接触してはいないのだけれど、遠目で見れば完全にお姫様抱っこだった。

「あの、えっと、じつは迎えにきてとまでは言ってなくて、えっと、このままじゃ兜わすれてますよ……!?」

 真っ赤になって慌てるシンデレラ。
 それを見て、ははっと笑った王子は、兜に目線を向ける。

 すると、兜の近くで魔法陣が光った。
 兜がふわりと宙に浮き上がり、浮いたまま王子の後ろについてくる。

 王子はシンデレラを抱えたまま家の玄関(舞台袖)へと一歩進み、立ち止まる。

「俺としてはこのまま城に向かいたいんだが、かまわないか?」
「は、ひゃい」
「それと――見たところ姉たちはお前をいじめていたようだが、彼女らをどうしたい?」

 王子は姉たちにするどい視線を向けた。
 すでにふにゃふにゃなシンデレラは、「えっと、えっと」と言葉を選ぶ。

「すごく感謝もしてるので、私怨(しえん)で罰するのはやめてほしいです。でも、特別に赦(ゆる)されてしまうのも変なので、……」

 シンデレラは続く言葉に悩み、悩み抜いてから言った。

「……ど、どうぞお好きに……?」

 欲のない答えだ、と王子はふっと目を細める。

「だとさ。シンデレラがシンデレラでよかったな」

 そうして王子は家の玄関(舞台袖)へと悠々と歩き出す。

『こうしてシンデレラは王子さまと結ばれ、幸せな人生を送ったのでした』

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