魔法の馬車、御者、従者、ドレス、そしてガラスの靴。
シンデレラは城に向けて出発する。
ちなみに馬車は本当に魔法でできていて、御者と従者は転移魔法で呼んでいるし、ドレスアップこそ自力だけどキラキラのエフェクトは魔法だ。
パーティーの中心で、王子様と華麗に踊るシンデレラは、鐘が鳴った瞬間、その滑らかな動きを鈍らせた。
「……どうかしたのか?」
ダンスの動きを止めないままに、王子がシンデレラに問いかける。
「今鳴ったのって、11時半の鐘ですよね? わたし、12時には家にいなくちゃならないんです」
「では家まで送り届けよう。確か馬車が……」
「いえ! お手をわずらわせるわけにはまいりませんわ」
「いいや、惚れた女に全く何もしなかったとあっては――」
曲の終わりと同時に、シンデレラは王子から手を離す。
「実は、今すぐここを出たとしても間に合うかギリギリなのです。それに、あなたには、わたしの他にもたくさん素敵なかたがいらっしゃると思います」
そう言ってお辞儀をして。
「けれど――もし本当にわたしを好いてくださっているのであれば、わたしを見つけ出してください」
シンデレラはそう言い残し、走り出す。ヒールの高い靴なので走りづらい。バランスを崩しかけて、なんとか踏みとどまったけれど、そのとき、ガラスの靴が左足から離れた。
「……あ」
ガラスの靴は、簡単には取りに行けない位置へ転がっていく。
「もう時間がない、急がなきゃ」
右足の靴を脱いで抱え、シンデレラは素足で舞台袖へと走り去った。
残された靴を拾い、王子はシンデレラが向かった方を見つめる。



