狂愛×シンデレラ

 いきなり話を振られてあたふたしながらも、私は頷く。

「うん、私、できると思う。怜の練習に付き合ってたから、衣装さえ合えば……」
「衣装は合うと思うよ、パッと見た感じだけど」

 さっきオロオロしていた2人のうち1人が、口に手を当て、目を光らせてこちらを見据えた。目測能力持ちなのだろうか。

 せいらは頷き、軽くパンと手を合わせる。

「――では、さっそく衣装合わせを。同時並行でセリフ合わせも行いましょう」

 せいらの一言で、みんなが動き始めた。
 推定・目測能力持ちさんが近寄ってきて、私の手を取る。

「仕切りの向こうへお願いします。セリフ合わせは仕切り越しで、ということで」
「わかりました。……ごめん怜、舞台の上でも一緒だから」

 開演ギリギリまでそばに居る約束を守れなかったことを謝って、仕切りの向こうで着替えを頼む。衣装を着せられながら、怜といつも通りのセリフ合わせをして、それなりに役が務まると証明をしてから、怜がいない場面のセリフをざっと確認。

 この時は目の前のことに必死で気づかなかったけど、自分のクラスのシフトを入れていなくて本当によかったよね。……ん、今なんて? まあいいか。

 それで、それから舞台での立ち位置を叩き込んで、多方面に迷惑をかけながら通し練習をさせてもらって、変だったところをせいらに指摘してもらって即修正……とあれこれドタバタしていたらあっという間に本番だった。