狂愛×シンデレラ

 今は高2の文化祭後だから、ちょうど4年くらい前。

 中1の文化祭で、怜のクラスが演目に選んだのはシンデレラで。王子様役を押し付けられた怜が棒読みで乗り切ろうとしていると知って、私はクラスメイトでもないのに部屋で練習に付き合っていた。

 ほぼ「格好いい王子役の怜が見たい!!!」という私利私欲の塊みたいな行動だったけど、人生何が役に立つかわからないもので。当日、シンデレラ役の子も代役の子も体調不良?か何かで、私は彼女に代わっていきなり舞台に立つこととなったのだ。

 というわけでこの部屋のクローゼットには、王子様役の衣装となぜかガラスの靴がある。

 ……ガラスの靴ってまだ履けるかな。
 試してみたい。

 身体に怜がくっついたままの状態でゆっくりクローゼットに移動して、ガラスの靴をしまった箱を取り出す。中1の頃は(シンデレラ役の子に合わせて作られたはずなのに)なぜかぴったりだった靴には、少しかかとが入らなかった。

 そのままスリッパのようにずりずり数歩進んで、靴を脱ぐ。
 すると、怜は私を抱きしめる手を片腕に減らし、もう一方の手でガラスの靴を手に取った。

 ――そうして、ヒールに手を掛けて、ぽきりと折った。