怜の口がぱくぱくと開いたり閉じたりして、なにか言いたいことがあるんだなと思って、そこでようやくひと言も会話をしていないと気づいた。
しかし久々に再会した一言目、しかもこの沈黙を破るとなればすぐ言葉が出ないのは必至。
少しでも怜を安心させられるように、私はにこっと笑って口を開く。
なにを言おうか。
「……久しぶり、でいいのかな?」
飛び出た言葉は、私の本音のはずなのに、“青空ひより”という人物としての外面であるかのように響いた。
昔、私が“青空ひより”の外面を使わず本音を話せたのは、白銀怜ただ一人だったのに。
外面を使うのは、相手と私は赤の他人だと規制線のテープを張る行為だ。
緩やかに距離を取ろうとしている、と怜に誤認されてもおかしくない。
「ごめん、学園を離れてから全然本音を喋る機会がなくてどうも本音の喋り方が思い出せないみた、……え?」
焦って言葉を重ねようとして、これも本音のはずなのに嘘っぽく聞こえてさらに焦ったとき――怜が私の右隣に座り、私の右手を取り、指を絡ませた。
いわゆる恋人つなぎというやつだった。
はじめてだった。
怜の手はひどく冷えていて、少しでも温めたくて、ぎゅっと握りかえした。
しかし久々に再会した一言目、しかもこの沈黙を破るとなればすぐ言葉が出ないのは必至。
少しでも怜を安心させられるように、私はにこっと笑って口を開く。
なにを言おうか。
「……久しぶり、でいいのかな?」
飛び出た言葉は、私の本音のはずなのに、“青空ひより”という人物としての外面であるかのように響いた。
昔、私が“青空ひより”の外面を使わず本音を話せたのは、白銀怜ただ一人だったのに。
外面を使うのは、相手と私は赤の他人だと規制線のテープを張る行為だ。
緩やかに距離を取ろうとしている、と怜に誤認されてもおかしくない。
「ごめん、学園を離れてから全然本音を喋る機会がなくてどうも本音の喋り方が思い出せないみた、……え?」
焦って言葉を重ねようとして、これも本音のはずなのに嘘っぽく聞こえてさらに焦ったとき――怜が私の右隣に座り、私の右手を取り、指を絡ませた。
いわゆる恋人つなぎというやつだった。
はじめてだった。
怜の手はひどく冷えていて、少しでも温めたくて、ぎゅっと握りかえした。


