狂愛×シンデレラ

 えっっっと…………ちょっと待ってくれるかな現実さん。

 突っ立ったまま深呼吸を繰り返して、それから辺りを見回す。

 ここは現在の寮の一室、それも怜の部屋。で合ってるよね?
 風景が昔――ここが怜と私の部屋だったころとそっくりで混乱する。

 まさかまさかの転移魔法に見せかけたタイムスリップ?
 いや違うな、机の上にロミオとジュリエットの脚本が置いてある。
 その脚本には「白銀怜」と丁寧に名前が書いてあった。

 走り書きじゃなく丁寧に書くところが律儀でかわいいなぁとほおが緩む。
 ふと思い立ってほおをつまんでみると、ちゃんと感触があった。

 夢じゃない。

 やっぱりここは今の怜の部屋で間違いないと思う。

 いちおう部屋の外へ出られるか試したけど鍵がかかっていた。
 怜は劇に出るため部屋を留守にしているわけだから当然だ。

 とりあえずオーナーさんに帰りが遅れることと、しばらく帰れない可能性があるけど大丈夫だよってことを伝えて。

 それにしても、立つ鳥跡を濁さずのつもりで丁寧に片付けてから部屋を出ていったはずなんだけど、どうしてご丁寧に逆戻りしているのだろう?

 というかそれより、どうして私はここに居るんだ。
 怜が怜の意思で私をここに転移させたとでも言うのか。

 怜が私の“赤の他人”であり続けるなら、部屋に私を招き入れる必要はない。

 ……もしかして、いやもしかしなくても。
 さっきの告白が怜に聞こえちゃってたりしますか。

 私の恋はまだ終わらないって信じてもいいんですか。

 うだうだとほぼ意味のない時間を過ごしつつ、そういえば劇は途中までしか見れなかったなと思った。