狂愛×シンデレラ

 怜とともに生きたいのはやまやまだけれど、怜がそれを望んでいるかはわからない。わからないと濁したけれど、怜は確かに私を拒絶した。その拒絶した時期が、ちょうど夕陽まむの魔法にかかっている間だったから、まだ望みを捨てられない状況だ。

 もし万が一、今は両思いだったとしても、()()()()()()()()()()()()()だ。それこそロミオとジュリエットのような結末を迎える可能性があるし、そうでなくともしばらくは「連絡手段ナシの遠距離恋愛」になるから冷めるリスクが大だ。

 私は冷めないと思うけど、怜は……。
 怜はなぜか私にだけ心を開いている感じがあったけど、どうして私なのかあんまり分からないから、うーん。

 あと、怜は白銀家の次期当主になったのだし、実はもう婚約者ができているかもしれない。そうなれば面倒な三角関係になり、これも悲しい結末へ結びつく。

 というかついついうだうだ考えちゃったけど、私、普通にこの劇が終わったらカフェに戻って今の日常に帰るんだよね。そうしたら私と怜は“赤の他人”。人生が交わることなんてたぶん無い。

 そうだ、「観客として生で怜の姿を見ることができた」というだけで奇跡なんだから、これ以上がある方がおかしい。

 ――これで、今度こそ、私の恋が終わりになるのなら。

 まだジュリエットに愛の言葉を伝えている怜には、たぶん届かないけど。

「怜、大好きだよ」

 小さく小さくつぶやいた。


 ……さて、いち観客に戻りますか、と思ったのだけど。
 なんだか怜と目が合っている気がする。
 怜の視線はジュリエットへ向いたままなのに。

 私ってば幻想しすぎ、なんて思う間もなく浮遊感。
 それは、まだ在学していたときに怜が何度か使ってくれた転移魔法に似ていて。

 次の瞬間、私は寮の部屋に居た。