狂愛×シンデレラ

 さて、お目当ての観劇と洒落込みましょうじゃありませんか。

 え?口調が変わってる?
 これでも浮かれてるんだよ、きっと。

 なるべく生徒たちと目が合わないように、つまりは目立たないようにホールまで歩く。ホールに入ると、もう座席が埋まっていたらしく、前の方へ詰めていくよう誘導があった。
 余談だけどその誘導をしていたのは高1のときのクラスメイトだった。最後に見てから1年も経たないのになんだか雰囲気が変わった気がする。

 まだ準備中みたいだ。ホールはざわざわしている。

 それにしても思ったより前の方で観ることになってしまった。
 ……舞台の上から観客の顔って分かったっけ。わりと分かった気がするな。

 どうしよう。

 いやマスクもサングラスもあるしバレないか。
 お手洗い行くふりして入り直せば後ろのほうで観れるけど、それだとまた誘導の生徒と近づくことになるしそっちの方がバレそう。

 なんて考えていると。

〈これから始まる演目は、高2のS組による『ロミオとジュリエット』です。――……〉

 アナウンスがあって、すっとホールが静まり返った。

 いよいよ劇が始まるんだ。