狂愛×シンデレラ

 本来いち卒業生に過ぎない私がここまでセキュリティ事情を知っているのは、怜の嫌がらせ対策がきっかけだった。

 文化祭は誰かを学園に侵入させるチャンスだ。
 大量の部外者が学校にやってくるのだから、1人くらい怪しい人間が紛れてもバレない。

 というわけで怪しい奴が入ってくるんじゃないかと監視カメラの映像を2人でこっそり覗いて警戒していた。

 けれど実のところ何もなかった。
 何かあれば学園長自身の責任になるのだからそりゃそうだった。

 そのとき知ったことは2つ。
 魔法を使った侵入者対策は特にないこと。
 そして監視カメラは(学園長たちですらも)簡単には見られないことだ。

 だから、今日いちばん警戒するべきは教職員と生徒の目、ということになる。

 私が詳しくセキュリティを知っているのは白銀学園だけ。それも文化祭の当日限定。
 ここまでピンポイントな知識が後になって役立つというのだから人生は侮れない……だなんて、悟った人間のような表情を作ってみる。

 車窓を見るとただの背伸びJKが映っている。
 よく考えたら卒業してしまったせいでJKですらなかった。

 ……。

 実は高校の飛び級卒業ってあまり良くないものなんじゃなかろうか。
 ほら、青春を奪う的なあれで。