狂愛×シンデレラ

 幸運にも乗ってすぐ席に座れた。

「……ふぅ」

 緊張する。
 今日は、文化祭の劇をちらっと見て帰るだけ。
 言ってしまえば、それだけのことなのに。

 いやまあ私が青空ひよりだってバレないように気を遣うことはいっぱいあるけどね?

 まず第一関門は、入口で名前を書いてパンフレットを受け取るところ。
 二つ目は、入口からホールまでの道にある露店。
 三つ目は、ホール内での案内係さん。

 この三つが、いちばん警戒すべき「生徒と顔を近づける場面」だ。

 あらかじめ対策はオーナーさんと練ってきたので、それを脳内で反復する。

 他に意識すべきは監視カメラとかだけど……まあそこまで警戒しなくても大丈夫じゃないかな。

 白銀学園で監視カメラは、実際に何か事件が起きてから調べるものという立ち位置だ。

 もし監視カメラに私が映ってしまっても、監視カメラの映像をチェックする機会そのものがまずないので、「青空ひよりらしき人物が映っていた」と騒ぎになる可能性も限りなくゼロに近い。

 それに、今の私の服装は、昔の青空ひよりとは趣向を変えているから、「青空ひよりに似てる」って思われることも多分ない。

 サングラスもかけるしマスクもするから余計バレづらいだろう。