狂愛×シンデレラ

 さらに、夕陽まむが転移させた先は、なんとこのカフェだった。

 荷物も手元にあったからしばらく生きられはするけど、今後行く当てがまったくなかったから、とりあえず目の前の建物に入ってみて……オーナーさんと出会って、とんとん拍子に住み込みで働くことが決まったのだ。

 もしかしたら、夕陽まむや白銀怜の義兄さんがあらかじめオーナーさんに「ひとり住み込みで働かせてほしい人が居る」と掛け合っていたのかもしれない。そう疑うほどスムーズだった。

 いずれにせよ、オーナーさんは「生存がバレないように」かつ「脱税をしないように」するためのすごく面倒な制約をのんでくれたので、ものすごく優しい。

 しかも働き始めて1か月くらい?のとき、私が風邪をひいて寝込んで、けれど保険証とかで生存がバレるので病院に行けない……と大大大迷惑をおかけしたとき、あまりに申し訳なくなって謝罪すると、オーナーさんは優しく笑って言ったんだ。

「お互い様よ。ソラさんが手伝ってくれて私は幸せだし、おまけにリピーターさんが増えて利益まで増えちゃったんだから」

 軽い調子でウィンクしてから、

「今度は私がソラさんを幸せにする番。難しいかもだけど、安心してゆっくり休んで」

 そう言ってそっと頭を撫でてくれたの。

 ……ねえ、優しいがすぎると思わない?

 やっぱりこれ以上迷惑はかけたくない。

 大前提として私が白銀学園の文化祭に行くだけでも、オーナーさんには迷惑がかかる。
 交通費は私の貯金から出すとしても、1日間、従業員がひとり減るから。

 それに私の生存がバレたら、私の計画は、私が行方不明(たぶん死んでる)になることで成立していた計画は、崩れるだろう。

 上手くいったはずのせいらの婚約破棄も、白銀怜への嫌がらせも、悪い方向へ向かってしまう可能性もある。