「それにしても大丈夫? 話したくなかったらそれで良いんだけど、ホームページになにか大きな変化でもあったの?」
「あ、はい、そうなんですよ」

 オーナーさんに心配そうな顔で尋ねられる。
 いけない、またぼーっとしちゃってた。
 私はパソコンに視線を戻し、表示されている文字を指でなぞる。

《世界一ビジュが強いロミジュリをお楽しみに!》

「えっと、文化祭のパンフレットが出てて……私が学園にいた時は『顔面最強☆相性最悪!』みたいな感じだったふたりが、ロミオ役とジュリエット役をやるみたいで」

 そこまで言って、私は口を閉じた。
 続く言葉が出てこなかった。

 当然だ。オーナーさんに心配を掛けてしまうほどに私が固まっていたのは、いろんな感情がごちゃ混ぜでどうしようもなくなったから。今もいろんなものが心で渦巻いていて、自分が何を思っているか自分にもわからない。

 だというのに。

「……行ってみたいの?」

 ハッとさせられた。
 ひと言で、すべてがすとんと腑に落ちた。
 オーナーさんは、私自身もわからなかった心の内を言い当てたのだ。

 ――そうだ、私はふたりが演じる姿を見たいと思っている。

 けれどそれは、いろんな人の協力を無駄にする行為だ。

「ちょっとゆっくり考えさせてください。……あ、パソコン使うならどうぞ」

 私はそう言ってタブを閉じ、パソコンの前から離れる。
 布団の中にもぐりこむと、まずここに来た経緯の振り返りから始めることにした。