それにしても。
どうも俺には、次期当主である自覚が欠けているらしい。
思考がずっと、義母や義兄が邪魔だったころのままで止まっている。
――義母や義兄の嫌がらせ。
確かにいい思い出とは言いがたいが、ひよりとの縁を繋いでくれたきっかけでもあった。
ひよりは置き土産として、俺に「義母や義兄に悩まされない立場」を残していったけれど。
たとえ義母や義兄の嫌がらせが続いたとしても、俺にとってはひよりと共にいる日々の方が大切だった。
根本がこんな思考だから、ひよりに毒牙が向いたときにすぐ対応できなかったのかもしれない。
部屋を見回す。
まるで誰もいないかのように静かで、けれど、2人ぶんの生活感がある。
普通に生活していて自然とできたものと、現実逃避のように作ったひよりの痕跡。
ここにひよりが戻ってくるなどあり得ないというのに、それでもなぜか、ひよりが戻って来られる場所が必要だという確信にも近い予感があった。
けれどこの予感も、きっと自分がひよりと共に生きたいと思っているゆえの幻覚なのだろう。
――変わったのは、ひよりへの執着。
元は何よりもひよりの幸せを願っていたはずなのに、気づけば、自分がひよりと過ごして幸せを味わうことを優先してしまいそうだ。
どうも俺には、次期当主である自覚が欠けているらしい。
思考がずっと、義母や義兄が邪魔だったころのままで止まっている。
――義母や義兄の嫌がらせ。
確かにいい思い出とは言いがたいが、ひよりとの縁を繋いでくれたきっかけでもあった。
ひよりは置き土産として、俺に「義母や義兄に悩まされない立場」を残していったけれど。
たとえ義母や義兄の嫌がらせが続いたとしても、俺にとってはひよりと共にいる日々の方が大切だった。
根本がこんな思考だから、ひよりに毒牙が向いたときにすぐ対応できなかったのかもしれない。
部屋を見回す。
まるで誰もいないかのように静かで、けれど、2人ぶんの生活感がある。
普通に生活していて自然とできたものと、現実逃避のように作ったひよりの痕跡。
ここにひよりが戻ってくるなどあり得ないというのに、それでもなぜか、ひよりが戻って来られる場所が必要だという確信にも近い予感があった。
けれどこの予感も、きっと自分がひよりと共に生きたいと思っているゆえの幻覚なのだろう。
――変わったのは、ひよりへの執着。
元は何よりもひよりの幸せを願っていたはずなのに、気づけば、自分がひよりと過ごして幸せを味わうことを優先してしまいそうだ。


