俺・白銀怜が自分の失敗に気づいたのは、サブキャラの配役も決まって、何度か脚本の読み合わせをしたあと。つまりはとっくに後戻りできなくなったあとだった。

 部屋の机に向かい、次期当主としての仕事をしぶしぶこなす最中。

 ふと思った。

 ……もしかして、白銀家次期当主としての権力を使えば、わざわざ主演なんてしなくても、もっと簡単に近況を伝えられたんじゃなかろうか?

 学園生活の特集を組んでもらったり、学園ホームページでブログ的なことをやったり、もしくはSNSを始めてみたり。いくらでもやり方はあったはずだ。

 すっかり失念していた。

 まあ学園公式でアップする情報はなるべく学園の印象を良くするように脚色が入るし、受け手も脚色が入っていることを前提に見るから、ひよりに近況の良さを伝えるには向かないだろう。

 だって、ひよりのような「途中で学園から姿を消す生徒」についての学園公式からの発表は無い。白銀家の次期当主が変わったことはさすがに書かれているが、その理由については誤魔化されている。だから何か他に事件が起こっていたとしても、それが公開される可能性は低い。

 そんなことを考えて、主演を演じると決めた自分を肯定する。

 後戻りはできない。
 SNSにアップされる情報だって信憑性は無いだろう?なんて絶対考えない。
 ひより曰く俺の顔は良いらしいから、真面目に適切に演じて、あとは天に任せる。
 数百人観客がいれば、少なくとも数人くらいはSNS中毒者がいるはずだ。