狂愛×シンデレラ

 今日の光石せいらは、あたしが転入してすぐのころ――まだ何の問題も起きていなかったころみたいにイキイキしている。

 彼女とその友人らしき人との会話に耳を澄ませると、「青空ひよりに顔向けできるように頑張ることにしたの」なんて言葉が聞こえた。
 マジメだ。彼女らしい。

 コミュ力の塊みたいな彼女が明るくなったなら、このクラスも、いや学年も徐々に元のいい空気を取り戻していくだろう。

 ちらりと白銀怜に視線を向けた。
 彼は近寄るなオーラを放ちながら、淡々と生命維持をしている。
 平常運転。今日もかっこいい。

 さあ、あたしも単位を落とさないように、自分のやるべきことをやろう。

 あたしが今ここに居るのは、ひよりちゃんの優しさのおかげだ。
 それをムダにしてはいけない。

 白銀怜と同じ教室の空気を吸って、あたしは今日も生きている。