狂愛×シンデレラ

 さっき白銀怜には教えたけど、あたしが使ってきたのは、記憶をいじる魔法だ。
 記憶を箱に閉じ込めて思い出せなくしたり、思い出の時系列をぐちゃぐちゃにすることができる。

 やりたい放題に見えるかもしれないけれど、もともと無かった出来事を生み出すことはできないし、あくまで正確に思い出せなくなるだけで、記憶自体を消すことはできない。

 だから解除したとき、魔法を「かける前」と「かけた後」のつじつまが合わないせいで記憶が宙ぶらりんになることはあっても、何かしらの記憶が欠けるなんてことはない。
 つまり、白銀怜があたしとの交際を覚えていないのは単なる彼のメンタル的なアレだ。かわいそうだから言わないでおいたけど。

 ちなみに失敗したことはないけれど、失敗すればたぶん記憶がぐちゃぐちゃな廃人になったまま一生戻らなくなると思う。だからいきなり白銀怜に使うのは怖かった。

 失敗さえしなければ記憶自体は消えないとわかっていたから、あたしは無情に魔法を使えたのかもしれない。
 たとえば、好きな人の声や顔を思い出せないようにして、好きだったのは夕陽まむ(あたし)だと誤認させたり。惚れたきっかけとなる思い出をおかしくして、「あれ、何で好きだったんだ?」と恋を忘れたところで、あたしとの恋を始めさせてもらったり。

 そうして何人もの人生をねじ曲げ、練習を重ねていたとき。

 白銀怜に恋人がいると知った。
 青空ひよりちゃん(その恋人)が、あたしよりずっと魅力的な人だってことも。
 ひよりちゃんと結ばれることが、白銀怜にとっての幸せだってことも。

 けれど。

 あたしは自分のやりたいを優先した。
 あたしはクズだ。金づかいの荒さで娘を苦しめたうちの親と、大して変わらない。
 人が苦しむとわかっても、自分の感情を優先して、人を苦しめ続ける。

 ごめんね。せめて、あたしから解放されたときに幸せになれるように、道すじは残すから。
 そんな言い訳を心の中で吐く行為すら、どうしようもなく親に似ていた。