うるさいくらいの眩い光に照らされた六人の男女。


「じゃあ今から"ゲーム"を始めたいと思います!」


や、やっぱり私、こんなとこ来るんじゃなかったっ……


流川絢音14歳。


最近誕生日が来て14歳になりました!が、そろそろ高校受験に時間を割かないといけない時期になりました。


なので、この時期に私はたっくさん遊ぼうと思って今は友達とゴウコン?とやらに来ています!


ゴウコンってきっとすっごく楽しくてキラキラした場所なんだろうなーっ


そう思って飛び込んだ世界だったんだけど……。


「じゃあ改めて皆さん初めまして!今回は俺主催の合コンに来ていただきありがとうございますー」


「わー……」


「……」


な、なんだここ……?


ゴウコンに行きたいと張り切って来てはみたものの……
なんだろうこのテンション感。


それに、ここってカラオケだよね?


一番テンションが高い男の人に誘導されるがままに入ったのはカラオケボックス。


酔ってるんですか?と聞きたくなるくらいテンションがハイな男の人の押しに負けて私達はゆらゆらとカラオケボックスに足を踏み入れちゃったの。


そして、現在はというと。


先ほどから楽しそうに場を回してくれている男の人はマイクを持っている手の小指を立てながら唾を飛ばしていたり。


その人の前にいる男の人はつまらなさそうにスマホと睨めっこ。


はたまたその隣にいる男の人はよだれを垂らしながら夢の世界へと行ってしまった。


ゴウコンってこんなものなのかな?


初めてだし、これがゴウコンって言われたら多分そうなんだろうけど……。


私が思っていたのはもっと品があって少し緊張感がある感じだったんだけど。


これって私の夢だったのかな……それより少女漫画の読みすぎ?


そう、なんと言っても私は少女漫画が大好き。


ヤンキーと優等生ちゃんのウブな恋とか学生の青春ラブストーリーとかが特に好きだったりする。


やっぱり夢だったのかなー。


目の前の光景に肩を落とし、潔く諦めることにした私はスマホの液晶画面を光らせた。


なんだか一緒に来た澪ちゃんと杏ちゃんもつまらなさそうにしだしから私はスマホのアプリを起動させ電子で読んでいる少女漫画の文字を追う。


今ハマってるのは生徒会長(男)と地味子(女)の学園恋愛もの。


少女漫画歴4年目の私の今までの傾向から私が好きなキャラクターはちょっとクズなお兄さんキャラだと判明。


普段は優しそうにしてるのにたまにクズになってるところとかが推しポイント!


今読んでいる漫画「会長様は譲らない」にもちょいクズさんが出てきていてビジュアルも性格も私にドンピシャ。


あーあ。こんな人が現実にいたらなぁ。


あまりにも現実との差を今見せつけられちゃったし余計に好きになっちゃった。


はぁと尊い気持ちを吐き出してスマホを胸のところで抱きしめる。


やっぱり私には少女漫画ががあれば大丈夫!


–––コンコンコンッ


ちょうどエセ酔いさんが一曲歌い終わったタイミングで扉をノックする音が室内に響く。


あれ、誰か来たのかな?



「あーごめん絢音ちゃんちょっと受け取ってくれる?」


「あ、はいっ」



ちょいクズさんに浸っていると唾を飛ばすエセ酔いさんが頼んだであろう食べ物が届いたらしくドアに一番近い私が受け取ることに。


もー歌うか食べるかどっちかにしてよねっ


さっきからエセ酔いさんのワンマンライブになっているこの場はまさに地獄状態。


だからちょっと空気の入れ替えという意味も込めてドアを開けた。


もうちょっと歌がうまかったらまだよかったのに……。


「ありがとうございま……す」


え……この人……⁉︎


「ご注文ありがとうございます。こちらフライドポテトです」


扉を開けた瞬間、風が吹き荒れたような気がした。


爽やかに笑う笑顔。


ちょっと見える白い歯やスッと通った鼻筋。


全てが彼をイケメンと言っているような顔立ちにやけに目が入ってしまう不思議な人。


持ってきてくれたポテトを無意識に受け取りながら私の視線はずっと男の人から離れなかった。


だってこの人、「会長様は譲らない」に出てくるちょいクズさんにそっくりなんだもん!


爽やかそうなのにちょっとミステリアスなところもある見た目。まさに私の大好きなビジュアル!


こんなドンピシャな人がこの世に存在するなんて……。


「あの、何か?」


「……つかのことをお聞きしますがもしかしてあなたは桐さんですか?」


桐さんとは「会長様は譲らない」のちょいクズさんの名前。


もしかしたら本当に?って思ってしまったの。


けど、私の言っていることを聞いた桐さん(仮)はぽかんと口を開けて何言ってるんだこの女という目で見ていた。


あ、私やらかした……っ


いくらイケメンで歯が白くてもここは三次元。二次元の人がこんなところにいるわけないじゃんっ!


「す、すみませんでしたっ」


いっきにバカらしくなってきてポテトを受け取った反対の手で思いっきりドアを叩き締めた。


あんなイケメンさんがこの世に存在するんだ……。


びっくりしたけどすごく嬉しく思っている自分もいてなんだか心が躍っている。


「あっポテトきたんだーありがとーぅ」


キランッとウインクしながマイク片手に私からポテトの入った器を持って行ったエセ酔いさん。


……なんか冷めたかも。


さっきの人はすっごくかっこよくて歯が白かったのにエセ酔いさん見てたら一気に冷めちゃった。


一応言っておくと私が歯が白い人の方がいいと思うのは清潔感があるし2割イケメンさんに変身するから!


そう思いながらもう一度エセ酔いさんに目線を向けるとポテトを迎え舌で食べていて流石に吐き気を催した。


あーあ。どこかに理想のちょいクズさんいないかなー。