入学して1か月が過ぎようとした頃、学食の掲示板に興味を惹かれる張り紙を見つけた。
 作詞作曲編曲研究会の入会募集だった。
 手書き文字で『ジャンルに拘らず音楽が好きな方、自分自身のオリジナル曲を作りたい方、一緒にやりませんか』と書いてあった。

 オリジナルか~、

 作詞や作曲の経験はなかったが、何故か惹かれるものがあった。
 そこでさっそく覗いてみることにした。
 
        *

 校庭の外れの古い木造の建物の中にその研究会はあった。
 ドアの前に立つと、中から音が聞こえてきた。
 どうしよか少し迷ったが、手は取っ手を掴んでいた。
 手前に引くと、ギィ~と音がした。
 それに反応した男たちがこっちを見ながら演奏していた。
 肩まである長髪が2人とスキンヘッドが1人。

 彼らに向かって軽く会釈をすると、顎をしゃくられたので、頷き返して中に入った。
 ドアを閉めると、またギィ~という音がした。
 スキンヘッドがドラムのスティックを持って机を叩いていた。
 長髪の一人は茶髪で、アンプを通さずにエレキベースを弾いていた。
 もう一人の長髪は黒髪で、彼もアンプを通さずにエレキピアノを弾いていた。

 ギタリストはいないのかな……、

 部屋を見回したが、ギターもギターケースも見当たらなかった。
 彼らはまるで自分たち以外には誰もいないかのように演奏に没頭していた。
 木の机を叩くタンタンというスティック音とエレキベースとエレキピアノの生音だけの演奏に、ハミングするような小さな声で歌をハモらせていた。
 オリジナルのようだったので、生音をエレキ音に頭の中で変換しようと試みたが、演奏が終わる方が早かった。
 その途端、ドラマーのスティックがくるりと回され、先端のチップがこちらに向けられた。