MOGAMIZは秋の大学祭でデビューを果たした。
屋外ステージにピアノを2台並べて、ショパンの曲をジャズ風にアレンジして演奏した。
1曲目は自分がリードを取る『ポロネーズ〈軍隊〉』で、2曲目は笑美が単独で弾く『子犬』、3曲目の『幻想即興曲』は連弾による速弾きを披露した。
弾き終わった瞬間、どよめきが起こった。
と同時に拍手が沸き起こり、指笛がそれに重なった。
信じられないほどの反応だった。
鳥肌が立って何がなんだかわからなくなった。
それは笑美も同じようで、呆然とした様子で鍵盤に手を置いたまま固まっていた。
「立って!」
部長の声で我に返った。
慌てて立ち上がって笑美を促して2人でお辞儀をすると、勢いを取り戻した波のように拍手が押し寄せてきた。
会場が静まるのを待って、『夜想曲第二番変ホ長調』を弾いた。
甘美で夢創的な美しいノクターンに誰もが魅了されているようだった。
そのせいか、指が鍵盤を離れてしばらく経ってから静かな拍手がさざ波のように始まり、そして、それがいつまでも続いた。
誰もが余韻の中にいるように思えた。
拍手が収まると、目で笑美に合図をして最後の曲を弾き始めた。
『ワルツ第一番変ホ長調〈華麗なる大円舞曲〉』
すると、演奏につられるように学生たちが踊り始めた。
社交ダンス部の学生だろうか、彼らは古き良き時代の貴族のように優雅に舞った。
演奏が終わってお辞儀をすると、また大きな拍手が押し寄せてきた。
それだけでなく、アンコールを求める拍手が鳴り止まなかった。
これには困った。
アンコール曲を用意していなかったからだ。
しかし、観客はそれを許してくれなかった。
どうしましょう、
困り顔の笑美が耳元で囁いた。
と言われても返す言葉はなかったが、突然あることが閃いた。
それを囁き返すと、彼女の目がぱっと明るくなった。
そして、うん、という感じで頷いた。
椅子に座った絵美が『子犬』を弾き始めた。
それを追いかけるように同じメロディーを弾いた。
犬の尻尾を笑美が、それを追いかける犬の口を表現するように演奏したのだ。
エンディングで追いついて同時に弾き終わった瞬間、会場を埋め尽くす観客が全員立ち上がって頭の上で手を叩き始めた。
スタンディングオベーションだった。
予期せぬ出来事に驚いたが、すぐに立ち上がって観客に拍手を送った。
すると、会場からの拍手が一段と大きくなった。
それに応えて笑美の右手を持ち上げると、彼女は貴族のようにスカートの裾を持ち上げ、
足を折ってお辞儀をした。
その瞬間、拍手が更に大きくなった。
「ブラボー」という掛け声がいつまでも続いた。
屋外ステージにピアノを2台並べて、ショパンの曲をジャズ風にアレンジして演奏した。
1曲目は自分がリードを取る『ポロネーズ〈軍隊〉』で、2曲目は笑美が単独で弾く『子犬』、3曲目の『幻想即興曲』は連弾による速弾きを披露した。
弾き終わった瞬間、どよめきが起こった。
と同時に拍手が沸き起こり、指笛がそれに重なった。
信じられないほどの反応だった。
鳥肌が立って何がなんだかわからなくなった。
それは笑美も同じようで、呆然とした様子で鍵盤に手を置いたまま固まっていた。
「立って!」
部長の声で我に返った。
慌てて立ち上がって笑美を促して2人でお辞儀をすると、勢いを取り戻した波のように拍手が押し寄せてきた。
会場が静まるのを待って、『夜想曲第二番変ホ長調』を弾いた。
甘美で夢創的な美しいノクターンに誰もが魅了されているようだった。
そのせいか、指が鍵盤を離れてしばらく経ってから静かな拍手がさざ波のように始まり、そして、それがいつまでも続いた。
誰もが余韻の中にいるように思えた。
拍手が収まると、目で笑美に合図をして最後の曲を弾き始めた。
『ワルツ第一番変ホ長調〈華麗なる大円舞曲〉』
すると、演奏につられるように学生たちが踊り始めた。
社交ダンス部の学生だろうか、彼らは古き良き時代の貴族のように優雅に舞った。
演奏が終わってお辞儀をすると、また大きな拍手が押し寄せてきた。
それだけでなく、アンコールを求める拍手が鳴り止まなかった。
これには困った。
アンコール曲を用意していなかったからだ。
しかし、観客はそれを許してくれなかった。
どうしましょう、
困り顔の笑美が耳元で囁いた。
と言われても返す言葉はなかったが、突然あることが閃いた。
それを囁き返すと、彼女の目がぱっと明るくなった。
そして、うん、という感じで頷いた。
椅子に座った絵美が『子犬』を弾き始めた。
それを追いかけるように同じメロディーを弾いた。
犬の尻尾を笑美が、それを追いかける犬の口を表現するように演奏したのだ。
エンディングで追いついて同時に弾き終わった瞬間、会場を埋め尽くす観客が全員立ち上がって頭の上で手を叩き始めた。
スタンディングオベーションだった。
予期せぬ出来事に驚いたが、すぐに立ち上がって観客に拍手を送った。
すると、会場からの拍手が一段と大きくなった。
それに応えて笑美の右手を持ち上げると、彼女は貴族のようにスカートの裾を持ち上げ、
足を折ってお辞儀をした。
その瞬間、拍手が更に大きくなった。
「ブラボー」という掛け声がいつまでも続いた。



