不機嫌になりつつ、あたしはケータイをいじり始める。


「お待たせ。これ。」


あたしが顔を上げると、ココアの缶を持っている和也。

「ありがと。」

受け取って、あたしは驚いた。
あったかい。




この学校には自販機が至る所にあるが、ホットの飲み物が入っている自販機は、一カ所にしか置いてない。




「ココア、俺の奢りね。美綺、ノート貸してくれたから。」

「……ホット、わざわざ買ってきてくれたの?」

あたしが聞くと、和也は笑顔で頷いた。

「うん。美綺の手、冷たかったからさ、ホットが良いかなって。美綺、前にココア好きって言ってたし。」


ココアの話をしたのは、確か半年ちかく前だった。

あたしがそんな昔にした話を、和也は覚えていたの?








.