そんな苦い思い出の水族園に僕は5年ぶりに来ている。 昼間のうだるような暑さを感じさせない、冷ややかな空間。 パチンコで帯びた熱を冷ますには、ちょうどよかった。 「あの時、正直どう思ってた?」 もうすっかり過去のことだとわかってはいたけど、気になって仕方がなかった。 「正直退屈だったわよ」と妻が答えた。 「だって、あなたってば、全然私の話を聞こうとしないんだもの」 「ええ? そうだった?」 「そうよ。あなたは覚えてないでしょうけど」 思い当たる節が一つもなかった。