「ねぇ、ねぇ。夏樹くん?本当にこのフロアに紗菜ちゃんいるのー?」



探している相手が全く見当たらず、このフロアまで僕達を連れてきた夏樹くんに問いかける。



「うーん……そのはずなんだけどなぁ……全然いないですね。」



まぁ正確に言うと、″いない″というより″見えない″という方があってるんだけどね。

今、僕達はもの凄い数の人(特に女の子)に囲まれていて、とても人を探せる状況ではない。



「もう、誰かに聞けばいいんじゃない?」



どうしようかなと思い始めたとき、いきなり司くんがそんなことを言い始めた。



「確かに!司くんたまにはいいこと言うじゃん。」



いつもはボケーっとしてるか、だらしなく寝てるかの二択のあの司くんが…成長したんだなぁ。



「たまにはって……俺が1番この中でまともだからね。」



どうやら本人は自覚がないらしく、いつもの司くんらしく変なことを言っている。

まぁ……司くんの言う通り、誰かに聞いてみるか…ふと目に付いた女の子達のグループに声をかける。



「ねぇねぇ。ちょっと聞いてもいいかな?」

「……っ、え?私達……ですか?」



そう言って目を丸くさせ、顔が赤くする女の子達。
そりゃ、急に男4人に話しかけられるのはびっくりするよね。


「うん!ちょっと質問があって…月摘紗菜っていう子知らないかな…?」

「あぁ…!紗菜様のことですか?紗菜様なら、さっき急いであっちの方に走って行きましたよ!」



ん…?走って行った…?どういうことなんだろう…



「そうなんだ!!教えてくれてありがとう!」



そう言って教えてくれてた女の子達に笑顔を返す。
…よくわからないけど、とりあえず早く紗菜ちゃんの方に向かわないといけないことは分かった。



「じゃあ、三人とも!みんなで紗菜ちゃん探しに行くよー!」

「いや、4人で手分けした方が効率的だろ。」

「涼くん…やっと喋ったね…」



やっと喋ったと思ったら、まさかの文句!?
これだから涼くんは…悪気がないのがまた腹立たしい。



「はいはい、じゃあ涼くんの言う通り、4人で手分けして探そう。」

「俺は1年の棟を探すから、白石は特別教室棟、新堂は階段とかエレベーター付近、宇美原は…適当に歩いとけ。」

「ちょっと!涼くん、僕だけ扱いが雑だよ!!」



せっかく涼くんの言う通りにしてあげたのに…!



「じゃあ、各自紗菜さん見つけたらメッセージ送ってね。それじゃ。」



涼くんから損在な扱いを受けている僕に笑いを堪えながらそう言う夏樹くん。



「…はーい。」



ちょっと不服だけど、今は紗菜ちゃんを探す方が大切だ…、



「よし、じゃあレッツゴー!!」



そう言い、紗菜ちゃん探しが始まった。