遡ること10分前
「遅い…」
心配と不安が混じったような涼の声に酷く共感する。っていうか……
「なーに、月摘ちゃんの心配してんの、りょーくん。」
「…………別にそういう訳じゃない。」
いや、反応おそ……
心配してんのが丸わかりすぎる涼の反応に少し驚いている。
同じ学園に通っていた一応幼なじみの俺たちがなんかあっても何も反応してくれないのに。
「紗菜さんもそうですが……雪斗も帰ってくるのが遅くないですか?」
たしかに……
ちょうど5分前くらいに雪斗が月摘ちゃんの帰りが遅いことに心配して探しに行った雪斗。
「雪斗の事だしまた抜けがけでもしてるんじゃない?」
「たしかにありえるな。」
「たしかにそうですね…」
自分が言い出したことだけど、雪斗信頼されてないなぁ。
まぁでもさすがにあと5分たっても帰ってこなかったら探しに行くか、そう思っていたとき体育館の入り口からドドドッと誰かが走る音が聞こえた。
…誰だろ
って…あれ雪斗?
「雪斗やっと戻って来たか〜心配し…」
…変わってる。
雪斗の表情も雰囲気も。おそらくこの5分の間に何かがあったのだろう。
「紗菜ちゃんが攫われた。」
…え?
まるで頭を鈍器でぶつけられた様な感覚になり、頭が混乱する。
それは涼と夏樹も同じようだった。
……ってなにショック受けたてるんだろ、俺。
月摘ちゃんとは数時間前に出会ったばかりの関係だ。
それなのに……
『皆さんありがとうございますっ…』
……あんな泣きそうな笑顔でお礼を言う人なんて初めて見た。
あの美貌の持ち主だ、可愛いだなんて数え切れないくらい言われているはず。
それなのにあんなふうに…
……気になる。
月摘ちゃんのこと。
不純な理由かもしれないけど、月摘ちゃんとまた話したい。
だから俺はーーーー
「犯人に目星はついてるの?」
君を見つけてみせるよ。
