八限目は朝葉学園図書館で

顔を上げてクラスメイト達の顔を見る。あ、やっぱりオバケなんだ。鬼の子供らしき人もいれば猫又っぽい子もいる。
「じゃあ、日那さんは一番後ろの窓側の席に座ってください」ジン先生の指さす方には空いた席が一つ置かれていた。
通路を通るときに感じる視線がちょっと痛い。
私が席に座るのを確認してジン先生が声を出す。「では、今日の授業は、、、」「おい」その声を何者かが遮った。
バッグからとりあえずペンポーチを出そうとかがんでいた私は思わず頭を上げた。その拍子に思いっきり机に頭を叩きつける。
痛っ、、。ぶつけたところをさすりながら前の方に視線をやると、一人の男の子が立っていた。
顔が赤くて頭に角が生えたヤンキー風の男の子。多分、鬼、、、かな。
「なあ、なんで人間なんかがこの学校に入ることになったんだよ。オイ、どういう事か説明しろ。このポンコツ教師」
ドスのきいた低い声。なんか私のせいでこんなにすごまれるなんて先生に申し訳なくなる。
でもジン先生は怯えたりせずにいつものように落ち着いた声で説明し始める。
「何度も言ったようにこの学校に人間の生徒が入学することは問題でも何でもないんですよ。前例もありますし、何より私たち妖怪にとっても良い影響をもたらしてくれますし。わかりましたか?鬼羅(きら)くん。」
「前例ったってたかが一人じゃねーか!それにコイツからは何の力も感じねえ。」
力、、?って何?どういう力?陰陽師的なやつなんかな。そうだとしたら私はこの場に相応しくはないのでは、、?
イライラしている鬼の子、鬼羅をなだめるようにジン先生が言う。
「仕方ないですねえ。では日那さん、ちょっと立ってくれますか?」
急に自分の名前を呼ばれて驚く。「は、はい。」
「では、これで何も問題がなければ日那さんの入学を認めますね?鬼羅君以外の君達にも言っているんですよ?」
ジン先生の声色が変わる。いつもの優しい雰囲気はどこかへいってしまったようで、肌からその恐ろしさは伝わってくる。
気まずそうに先生から目をそらすオバケ達の様子を見ると部外者である私を良く思っていないのがよくわかる。
まあ、そりゃそうだよねえ。
「チッ、、、わかったよ」舌打ちをしてドカッと椅子に座る鬼羅を見ると先生はまたいつものように微笑んで私の方を向く。
「日那さんに質問です。このクラスにあなた以外のオバケは何人いますか?」
突然の質問に少し戸惑ったが、すぐにクラスを見渡して数を数える。15、16、17、、、、。うん、これだ。
「えっと、19人です。」私の答えにクラスメイト達が一斉にこちらを見る。
さっきまでけだるそうにネイルをいじっていた何のオバケか分からないギャル風の女の子も目を丸くしている。
え?何?頭の中が?でいっぱいだ。
ジン先生は満足そうにうなずくと「はい、よろしいですか?」と鬼羅に話しかける。
鬼羅くんはまたチッと舌打ちをすると少し不服そうにしながらもコクっとうなずいた。
「それでは授業を、、、ってあ、、。やってしまいました。忘れ物を取りにいって来るのでその間日那さんと話してくださっていても結構ですよ。」そう言ってジン先生は教室を出て行った。足音を全く出さずに。
私はそれに驚いて少しの間固まっていたがハッと思い出し隣の席の花子さんに質問する。
「花子さん、さっきのってなんのテストだったの?」首を傾げる私に花子さんが笑顔で言う。
「すごいね!日那!まさか、隠れていたオバケたちも見破るなんて。」隠れていた、、、?
何のことだ?もう一度クラスを見渡すがやっぱり19人。全員、綺麗に席に座っている。
何がどう隠れていたというのだ。それにそんなことで何が分かるというのか。私の頭は?で埋め尽くされる。
するとあのギャル風の女の子が立ち上がってこちらに来る。
「アンタ、凄い!私の事見えてんだ!」と目を輝かせてこちらを見てくる。
「あ、ありがとうございます、、?えっと、、、、」どうしよう名前が分からない。
「ああ、私の名前は瑠鬼!瑠鬼か、瑠鬼ちゃんって呼んでね!鬼羅の妹で鬼の一族なんだ。」
え!?この子も鬼なの?鬼羅は一目見ただけで鬼だってわかったけど正直瑠鬼の方は全く分からなかった。
偏見だけどザ・ギャルって感じだったから。
「日那は見鬼の才があるんだろうな」コウの言葉に首を傾げる。
「見鬼の才、、、?ってなに?」
「見鬼の才っていうのは簡単に言うとオバケかオバケじゃないものかを見極められるっていう能力の事で人によってその力の強さとかは結構違うの。日那くらい力が強い子、私も初めて見た。それくらいなら防御の術なんかはすぐできそう。」
瑠鬼ちゃんがわかりやすく解説してくれた。
「私今までオバケとか見えてこなかったけど町中とかにはいないの?」
「いや結構町中にもいるぞ。俺らみたいに人格保てないくらい危険な奴もいる。多分、日那が今まで見えてこなかったのは見る必要がなかったからじゃないかな。」
「へ、へえ、、。?」まだよくわからないけどとりあえず少しはクラスに馴染めたのか、、、、な、、、?
でもやっぱり不安は残る。あの時みたいにならなようにしなくちゃ。またあんなことになったら、、、、考えるだけで恐ろしい。
つい手が強張ってスカートの裾に触れていた手が強く握られる。
「日那」名前を呼ばれて顔を上げるともうクラスメイトのほとんどは席についていた。
ジン先生の気配がするのを私よりも早く察知したみたいだ。
声のした方に首を向ける。ああ、花子さんか。
「なに?」
「ありがとね。」
そういうと花子さんはふふっと微笑んで机に突っ伏して寝てしまった。
何の感謝だ一体、と思ったけどなんとなくわかる気がしたのできかない。
花子さんの方に体をかがませる。
「こっちこそありがと」
ガラリ
扉の開く音がして慌てて椅子に座りなおす。
ジン先生がクラスを見渡して言った。
「それでは授業をはじめます。」