「そうだね。今の吉岡さんの顔は、誰にも見せたくないな」
「じゃ、名残惜しいけど」
そう言って、忙しい先生は次の現場へ向かっていった。
――どうしてくれるんですか、先生。
これ以上、弄ばないでほしいのに。
先生の言っていることが本当だったら、なんて。
そんな期待をしてしまう自分が、情けない。
報われない恋だと分かっていても、一度自覚してしまったこの気持ちを、もう消すことはできなくて。
『忘れられても、思い出してもらえなくても、それでも……俺の気持ちだけは消えなくてさ』
あの時の先生の言葉と表情が、鮮明に思い出される。
先生には――
どうしても忘れられない人がいる。
わかっているのに。
あんなふうに言われて、何も感じないほど大人にはなれなかった。
胸の奥が、じわじわと苦しくなる。
――ダメだ。
仕事に集中しなきゃ。
そう言い聞かせながら、ナースステーションへ急いで戻った。


